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Sekai
- Kariu Kenji
- 世界/狩生健志
- BR-D 36
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- Format
- 48kHz/24bit
- Label
- BRUIT DIRECT DISQUES (kariu kenji)
- Release
- 2020-12-12
TRACKS
Kariu Kenji, the leader of the Tokyo-based band "OWKMJ", has released his third solo album in nine years.This is a new release from Bruit Direct Disques, a French label that has also released Tori Kudo and Mamitri Yulith Empress Yonagunisan.
It is a masterpiece/problematic piece of work that took its time and was produced almost entirely by one person in the midst of the corona crisis, and is a significant leap forward in terms of sound design, composition, and vocals. If "OWKMJ" is a "dynamic" sound that crosses various genres, then this album is a "quiet" , an expression of the various performances/listening experiences internalized in the memory of its creator.
It is not a spontaneous attempt to Integrate any kind of genres, but rather a work in which a variety of genres sprout up intrinsically, and you can feel a sense of awesomeness as if you were catching a glimpse of the songwriter's own musical history in the group of songs recorded on this album. The album's sound has a modern sound texture that evokes pop, rock, folk, electro, soul and other genres of recent years' hip-hop/r'n'b and beyond, but there is a gradual deviation from all of them, and the album is packed full of musical intricacies,gaps and discrepancies.
The "vocals" in this album are just as, if not more, appealing than the sound. According to him, "I took advantage of the fact that it's not a singer's voice and recorded it to make the most of the potential of my humble voice", but when you listen to this singing with its flat, almost calm intonation, and not trying to sound like a pretender, it gives you a strange, foreign feeling, and "What is a song?" You are made to feel compelled to ask, "What is this?" It's like a verse reading, a lyrical monologue, but you'll be reminded time and time again that this is an undeniably solid song. The lyrics, which expand the song's imagery in multiple layers, are also wonderful, and I think they have a universal power, as if the song (or words) grow in the listener's mind as they follow the words.(An English translation of the lyrics is included with the LP.)
The introspective moods of the covid-19 ravages and the quiet landscape of the city under the declaration of the state of emergency overlap, and at the same time, the towering figure of a musician who never stops creating/imagining his own music comes to the fore in this raw, contemporaneous music. Please come and listen to these songs and sounds that are the ultimate in originality backed by a keen critical eye.
東京を拠点に活動する“俺はこんなもんじゃない”のリーダー、狩生健志の9年ぶりとなるソロ作品。工藤冬里やMamitri Yulith Empress Yonagunisanもリリースするフランスのレーベル“Bruit Direct Disques”からのリリースです。
コロナ禍の中、じっくりと時間をかけてほぼ1人で制作されたという本作、サウンド・デザインや音響、そして歌の面でもかなりの飛躍を遂げた傑作/問題作となっております。“俺はこんなもんじゃない”が様々なジャンルを掛け合わせる“動”的なサウンドであるとするのなら、本作は作り手の記憶の中に内在化された多様な演奏/リスニング経験が表現として発露されていく“静”的なサウンド。自発的にジャンルをどうこうするのではなく、内発的に多様なジャンルが湧き出てくるような作品で、収録された楽曲群には作者自身の音楽史を垣間見るような凄味が感じられます。そのため、近年のヒップホップ/R&B以降のモダンな音の質感でポップス、ロック、フォーク、エレクトロ、ソウルなどを想起させるように展開されていくも、どのジャンルとも少しずつズレが生じていく、そんな音を巡る錯綜がギッシリと詰め込まれた作品となります。
そして、サウンドと同等かそれ以上に魅力的なのが本作における“歌”の存在。 本人曰く「いわゆる”歌手の声”ではないことを逆手に取り、地味な声のポテンシャルを最大限に活かす形で録音した」とのことですが、平熱的ともいえる抑揚の少ない歌唱で、決して奇を衒っているわけではないのに、奇妙な異物感を孕んだこの歌を聴いていると、“歌とは何か?”と問わずにはいられなくなるような心地にさせられます。 節のついた朗読のようで、リリカルなモノローグのようでもあるが、これは紛れもない強固な歌である、ということに幾度となくハッとさせられることでしょう。また、曲のイメージを幾重にも広げていく歌詞も素晴らしく、言葉を追いかけることで聴き手の中でも歌(言葉)が育っていくような、ある意味ユニバーサルな力も宿っているのではないでしょうか。
コロナ禍における内省的な気分、非常事態宣言下の静かな街の風景がオーバーラップしてくると同時に、そんな中でも創造/想像することを止めない1人の音楽家の屹立した姿が浮かび上がる同時代性を帯びた生(ナマ)の音楽。鋭い批評眼に裏打ちされたオリジナリティの極みをいく確かな歌と音に是非触れてみてください。
インフォメーション作成:清水久靖(Record Shop “Reconquista”)
Kariu Kenji - All Music and Lyrics / Instruments and Vocals / Recording and Mixing,Mastering
Yuki and Sera - Voice on A-6
LP is now available on the Bruit Direct Disques site http://bruit-direct.org/prod/kenji-kariu-sekai/
Lyrics:
A-1 世界
俺は街に出て
街中の景色を
一枚も残さず
カメラにおさめた
俺はその後、街に出て
街中の音をマイクで拾って集めた
俺はその後 ビデオカメラを片手に
街中の動画をハードディスクにおさめた
俺はその後 街の概観図を スケッチしてスキャンして 名前をつけて保存して持ち歩いた
俺はその後 街中の家を訪ね 街中の人の名前と生年月日をメモした
A-2 夢がかなった
ボートにのって本をひらき、昔とった写真を見れば
風になった動物たちが 船をはこんで 夢がかなった
太陽が照りつける 山が崩れ 海は燃えてる
死にそこなった頭の中 階段下る 湖に出る
太陽が落ちてゆく 俺の庭の緑は黒い
そこにあったはずの手帳がない もう歩けない 傘もささない
広い美しい庭を 一人歩いた
俺は一人なのか 動物が鳴いてる
ボートに乗って本をひらき 昔とった写真を破る
風になった友達は 船をはこんだ 夢がかなった
A-3 それ
それはどこにでもある それは流行りの仕種 それは何かの合図
それはナイフの硬さ それはありふれた夜 それは それは
それは狼の群れ それは誇らしげな人 それは それは
それは響く足音 それは空気のように それは それは それだ
それに昨日気づいた それの話はしない それは それは
それは昔からあり それはかたちをかえた それは それは
それはありふれている それは哀しいリズム それは それは
それは優しく誘う それはどこにでも行く それは それは それだ
A-4 アトリエ
もしも歌がナイフなら果物の夢を 銀の皿にとりわける 午後の光 キャンバスで
響き合う季節のかけらが 意味のないかたちを探している
もしもピアノが船なら 地下鉄の夢を エスカレーターおりてくる マネキンたち人混みへ
持ち主をなくした心が 意味のないもようを描いている
もしも歌がナイフなら もしもギターが鳥なら
もしも私が地図なら ぬりつぶされた街の青に溶けていく
もし太鼓がたたけたら 分厚い扉を 笑いながら突き抜ける 午後の光イーゼルへ
混ざり合うおかしな動きが この部屋の涙の色を変える
もしもギターが鳥なら 天井の穴を 迷いながら降りてくる 夜の光 ラジオでは
混ざり合う世界のニュースが キャンバスの余白の意味は変わる
もしも歌がナイフなら もしもギターが鳥なら
もしも私がペンなら描きたした雲 砂のように溶けた夏
A-5 影絵
沢山の暗い家 響く声 伸びる影 もよう 私の指が つくりだした人の形を
ただ眺めてる
ざわざわと 白い海 光る夜 踊ってた もよう 私の指が なぞりだした夢の気配を
影はかたち かたちは変わる 影はわたし わたしはつくる わたしがつくる
A-6 誕生日
誕生日 夢をみた ローソクの家 まわってる 燃えながら
誕生日 おめでとう となりの部屋で 踊ってる 夜も更ける
誕生日 街に出る ねずみが道路を横切って 空高く 誰か叫んでた 誕生日
誕生日 夢を見た ローソクの家 燃えている 誕生日
B-1 星座
プラネタリウムで服が消えたよ となりの男の服も消えたよ
明かりがついて 服を探した だけど俺は気づいた 元々着ていない
プラネタリウムに警察がくる ブラックホールに吸い込まれてく
明かりは消えた 星はまたたき 夜明けは近い 月の光で穴を掘れ
プラネタリウムで腹がへったら となりの家族の弁当を食う
明かりがついて 星が転がり 星座になった俺はミクロの夢を見た
プラネタリウムに兵隊がくる プラットホームで見送られてる
明かりのもとで 手紙を書くよ ペンは踊り誰かが世界の夢を見た
B-2 それでも秋
ATMからぶどうが出てきた
私は苛立ち 手元のベルならす
いかれてしまった ゲームのルールは
夕闇とともにこの空を飲み込む
季節はもう秋 天高く秋 かくされた意味 特になく秋
ATMからうさぎが出てきて
私は戸惑い 行列を離れる
昔はよかった ムカデを飼ってた
透明のハコがこの空を隠した
季節はもう秋 意味もなく秋 少しだけ寒い 今日からは秋
B-3 劇場
劇場の夜のカーテンが揺れる 年老いた男は鏡の中 笑う
芝居がはねたら 次の街へ向かう 真夜中の映画 そこで少し眠る
私の涙と 非常灯のあかり 誰かの記憶も揺れている
深い椅子に座り 次の幕が開いて 皆同じ夢を見た 魔法にかかって
植物の時を さまよう魂 次の宿を探す そこで少し眠る
私の心が 何かにぶつかる 暗い息を吐いて こっちを見ている
B-4 やな小鳥
やなことり いやな小鳥 空は青く澄んでいる でも興味ない
部屋の隅 つついてる 都会の風に吹かれて歌は忘れた
やなことり 羽をたたんで ふわふわの羽毛で宇宙の夢を見る
やなことり 思い出せない 旅立ちの空がくれた勇気を
やなことり いやな小鳥 種をはこぶ風の歌に興味はない
窓越しに見る世界 風にできないことは雨にもできない
やなことり 街を眺める 貧しい家の少女が売るバラの色
やなことり 涙を流す 壁に架けたバスキアにフンをする
B-5 花のかんむり
花のかんむりを手に入れた男は雨をおそれて
走り出す 何も無い 走り出す
花のかんむりで踊ってた女は傘を広げて
夢深く おりてゆく 夢深く
魂や 出来事が 重なりゆくこの場所に今日の舟が着く
花のかんむりで歌ってる子供は海に呼ばれて
なつかしむ 知らぬ国 なつかしむ
B-6 もしかして
もしかして消えていくのか 名前すらない あの街角へ
目がさめて 風のゆくえを 誰も知らない たずねもしない
虫たちに空 鳥たちに雲 机にはペン 遠くの国で誰か死ぬ
もしかして失ったのか 季節はずれの流れの中へ
目がさめて 君のゆくえは 誰も知らない 誰も知らない
星が降る夜 朝は震えて テーブルにパン 時計の針も震えてる
もしかして もしかして
もしかして 君のゆくえを 知る人はなく 祝う朝もない
鍵のない部屋 たどりつく冬 机にはペン 影が寂しく部屋に射す
B-7 ポケット
君のポケットに穴を開けるよ
スリリングだね 穴が開いたよ
僕のポケットに穴を開けるよ
元々だけど 更に開けるよ
スリリングだね 穴が開いてる
B-8 暗い朝
暗い朝 ほの暗い冬の朝
ふらふらと 水蒸気 旅に出る
遠い国の言葉でつづった長い手紙を
ひきだしにしまい ノートの上 何が見える
深い夜 霧深い冬の夜
そわそわと 良き知らせ 待っている
遠い国の出来事みたいな昨日の夢が 新しい色で部屋を満たし響いている
夜更けに鳥が鳴く
遠い冬 追い付けぬほどの冬
ふわふわと 明るさが揺れていた
怖い朝 罪深き人の朝
ふわふわと 幸せが揺れていた
Kariu Kenji profile:
Born in Fukuoka Prefecture in 1979.
In 1986, picked up the guitar behind the parking lot, released five albums with the band "OWKMJ" and three solo albums , toured the U.S. and performed at the SXSW festival ,had been involved in many visual music projects such as the feature film "Hikari no Tabi(2017)".
狩生健志プロフィール:
1979年 福岡県で誕生。
1986年、駐車場でギターを拾い、その後バンド「俺はこんなもんじゃない」にて、5枚のアルバム、ソロにて3枚のアルバムを発表。米ツアー、SXSWフェスに出演。
長編映画「ひかりのたび」(2017)など、多数の映像音楽に関わる。