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Live (In My Room)
- Kenji Kariu
- Live (In My Room)/狩生健志
- KIBA 03
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- Format
- 48kHz/24bit
- Label
- Kiba Record (kariu kenji)
- Release
- 2023-11-30
TRACKS
2022年~2023年にかけて制作した4作目のソロアルバム「雨 / 水」のリリースは2024年に持ち越しとなり、その副産物としてこの音源は制作された。
タイトル通り、自室で行われたライブ・アルバムであり、2023年10月25日と26日の録音からテイクを選び、収録している。
The release of fourth solo album, "Rain / Water," produced between 2022 and 2023, was carried over to 2024, and this album was produced as a byproduct.
As the title suggests, this is a live album performed in my own room, and takes were selected from recordings made on October 25 and 26, 2023.
録音は基本的にコンデンサーマイク1本で行われた。
当然の事ながらボーカルとオケ(ギター)のバランス調整が後からは困難なため、立ち位置や、発声の仕方、ギターの弾き方など、ミキシング的な要素を念頭に演奏は行われ、これが通常のライブとはやや異なる点である。
The recording was basically done with a single condenser microphone.
Naturally, it is difficult to adjust the balance between the vocals and the backing (guitar) afterwards, so the performance was done with mixing elements in mind, such as standing position, the way of vocalization, and the way of playing the guitar, which is somewhat different from a normal live performance.
また、トラック同士の音量調整以外の方法での調整はミキシングの段階でも行われ、マイク一本で録られたモノラルの情報を、自然な形を壊すことなく、いかにコントロールし、ポストプロダクションで、ある種のマジックを生じさせられるかどうか、ということは新しい挑戦であり、そこから得られる教訓はとても大きかったと言える。
The challenge was to control the monaural sound recorded with a single microphone without destroying its natural form, and to create a kind of magic in the post-production process. It was a new challenge, and the lessons to be learned from it were significant.
収録曲は前作「世界」の曲が大半を占めるが、次作からの曲も含まれている。
歌とギターと空気感しか要素がなく、作っていてこの上なく心細かった。
The majority of the songs on the album are from the previous album "Sekai", but also include songs from the next album.
The only elements were songs, guitars, and atmosphere, and it was the most heartbreaking thing to make.
これは色々な意味でこの歳にならないと作らない音源だと思う。
色々な意味というのは、自信と諦めが綯い交ぜになったような(その比率はご想像にお任せします)、名付けようのない心持ちである。
In many ways, this is a work that one would have to be at my age to make.
What I mean by "in many ways" is a mixture of confidence and resignation (I'll leave the ratio to your imagination), a feeling that I can't really put a name to.
歌詞
1.アトリエ
もしも歌がナイフなら果物の夢を 銀の皿にとりわける 午後の光 キャンバスで
響き合う季節のかけらが 意味のないかたちを探している
もしもピアノが船なら 地下鉄の夢を エスカレーターおりてくる マネキンたち人混みへ
持ち主をなくした心が 意味のないもようを描いている
もしも歌がナイフなら もしもギターが鳥なら
もしも私が地図なら ぬりつぶされた街の青に溶けていく
もし太鼓がたたけたら 分厚い扉を 笑いながら突き抜ける 午後の光イーゼルへ
混ざり合うおかしな動きが この部屋の涙の色を変える
もしもギターが鳥なら 天井の穴を 迷いながら降りてくる 夜の光 ラジオでは
混ざり合う世界のニュースが キャンバスの余白の意味は変わる
もしも歌がナイフなら もしもギターが鳥なら
もしも私がペンなら描きたした雲 砂のように溶けた夏
2.世界
俺は街に出て
街中の景色を
一枚も残さず
カメラにおさめた
俺はその後、街に出て
街中の音をマイクで拾って集めた
俺はその後 ビデオカメラを片手に
街中の動画をハードディスクにおさめた
俺はその後 街の概観図を スケッチしてスキャンして 名前をつけて保存して持ち歩いた
俺はその後 街中の家を訪ね 街中の人の名前と生年月日をメモした
3.水
足元を流れる 深く濁った川
世界を追い抜いて 記憶を漂う
映画の主人公は 流れ着いた水辺
貧しい川べり 月はどこに出てる
足元を流れる 深く悲しい川
川底をさらって 金貨を数える
年寄りは静かに 水面を眺めて
口ずさむ歌はない
水はどこで出会う
深い川 沈む勇気
砂に隠した 古い写真を
昔から流れる 名も無きこの川
いつか一つになるのか 月はどこに出てる
4.誕生日
誕生日 夢をみた ローソクの家 まわってる 燃えながら
誕生日 おめでとう となりの部屋で 踊ってる 夜も更ける
誕生日 街に出る ねずみが道路を横切って 空高く 誰か叫んでた 誕生日
誕生日 夢を見た ローソクの家 燃えている 誕生日
5.それ
それはどこにでもある それは流行りの仕種 それは何かの合図
それはナイフの硬さ それはありふれた夜 それは それは
それは狼の群れ それは誇らしげな人 それは それは
それは響く足音 それは空気のように それは それは それだ
それに昨日気づいた それの話はしない それは それは
それは昔からあり それはかたちをかえた それは それは
それはありふれている それは哀しいリズム それは それは
それは優しく誘う それはどこにでも行く それは それは それだ
6.やな小鳥
やなことり いやな小鳥 空は青く澄んでいる でも興味ない
部屋の隅 つついてる 都会の風に吹かれて歌は忘れた
やなことり 羽をたたんで ふわふわの羽毛で宇宙の夢を見る
やなことり 思い出せない 旅立ちの空がくれた勇気を
やなことり いやな小鳥 種をはこぶ風の歌に興味はない
窓越しに見る世界 風にできないことは雨にもできない
やなことり 街を眺める 貧しい家の少女が売るバラの色
やなことり 涙を流す 壁に架けたバスキアにフンをする
7.花のかんむり
花のかんむりを手に入れた男は雨をおそれて
走り出す 何も無い 走り出す
花のかんむりで踊ってた女は傘を広げて
夢深く おりてゆく 夢深く
魂や 出来事が 重なりゆくこの場所に今日の舟が着く
花のかんむりで歌ってる子供は海に呼ばれて
なつかしむ 知らぬ国 なつかしむ
8.夢が叶った
ボートにのって本をひらき、昔とった写真を見れば
風になった動物たちが 船をはこんで 夢がかなった
太陽が照りつける 山が崩れ 海は燃えてる
死にそこなった頭の中 階段下る 湖に出る
太陽が落ちてゆく 俺の庭の緑は黒い
そこにあったはずの手帳がない もう歩けない 傘もささない
広い美しい庭を 一人歩いた
俺は一人なのか 動物が鳴いてる
ボートに乗って本をひらき 昔とった写真を破る
風になった友達は 船をはこんだ 夢がかなった
9.影絵
沢山の暗い家 響く声 伸びる影 もよう 私の指が つくりだした人の形を
ただ眺めてる
ざわざわと 白い海 光る夜 踊ってた もよう 私の指が なぞりだした夢の気配を
影はかたち かたちは変わる 影はわたし わたしはつくる わたしがつくる
10.夢で会いました
夢で会いました
暗い夢でしたね
濡れた髪 かき上げ
夢を踊り明かす
夢で会いました
夢で会いましたよ
濡れた花 踏み分け
小舟に火を放つ
雨の雫が 頬を伝う
泣いていたのか
夢で会いました
暗い夢でした
舟は揺れてる
夢で会いました
B-1. 暗い朝
暗い朝 ほの暗い冬の朝
ふらふらと 水蒸気 旅に出る
遠い国の言葉でつづった長い手紙を
ひきだしにしまい ノートの上 何が見える
深い夜 霧深い冬の夜
そわそわと 良き知らせ 待っている
遠い国の出来事みたいな昨日の夢が 新しい色で部屋を満たし響いている
夜更けに鳥が鳴く
遠い冬 追い付けぬほどの冬
ふわふわと 明るさが揺れていた
怖い朝 罪深き人の朝
ふわふわと 幸せが揺れていた
B-2.それでも秋
ATMからぶどうが出てきた
私は苛立ち 手元のベルならす
いかれてしまった ゲームのルールは
夕闇とともにこの空を飲み込む
季節はもう秋 天高く秋 かくされた意味 特になく秋
ATMからうさぎが出てきて
私は戸惑い 行列を離れる
昔はよかった ムカデを飼ってた
透明のハコがこの空を隠した
季節はもう秋 意味もなく秋 少しだけ寒い 今日からは秋
B-3. 花の名前
花の名前 聞いたけど忘れた
悪い薬みたいな名前
吸い込んだら倒れそうな冷たい響きの
君の名前
花の名前 呼んでまた忘れる
どこかの海みたいな名前
口ずさんで 踏むステップ
日が沈んだ後 砂に書いた その名を 波がさらう
懐かしい歌も 長い手紙も 届かない朝に 深く沈む
君の名前 呼んでまた忘れる
帰り道 雨に濡れて
名前呼びかければ
みんなが振り向いてしまう
不思議な力が宿った
君の名前